2010年12月23日木曜日

To be,or not to be.

「To be or not to be:that is the question.」
これは私の今年の流行語大賞です。いうまでもなく、シェイクスピア『ハムレット』の名台詞。
『ハムレット』にいたく感動した!わけではなく、タイトルもずばり『生きるべきか死ぬべきか(To Be or Not to Be)』という映画の影響を受けました。

『生きるべきか死ぬべきか』は1942年アメリカの映画。大仰なタイトルからは想像できない、洗練された笑いを届けるコメディ映画です。時期が時期だけに徹底的なナチ批判をしますが、それを笑いの中に溶け込ませているところがすごい。

登場する夫婦は俳優で、『ハムレット』の舞台を演じています。
「To be ~」のところは独白ですから、舞台上に夫ひとり。その間に妻が若い男と逢引をするんですね。

逢引のタイミング、サインになるのがこの台詞の始まりです。この台詞の生かされ方が絶妙。すごく気に入って流行語となるにいたったわけです。

読んでいたから、知っていたから、そのものがより楽しめる、ということがあると思います。パロディ作品なんてそうですね。もとを知らないと楽しめない。『ハムレット』自体、読んでもおもしろいともおもしろくないとも思いませんでしたけど、読んでからこの映画を観てよかったと思いました。

私の今年1年はその[もと]をひたすら吸収していたような気がします。本を読む、映画を観る、古典からファンタジーからいろいろと、次から次へと。今すぐに何かに変わるわけではないことに、一見無駄とも思えることに時間を費やしました。

そんな日々を送った私にとって、印象に残った本。脚本家・小説家である向田邦子さんの『夜中の薔薇』です。

突然の飛行機事故で亡くなられた方なので、死後、いろんな雑誌からの文章(エッセイ)が1冊の本にまとめられていて、この本もその1冊です。旅行記だったり食べ物のことだったり、男性鑑賞法なるものもありますが、特筆すべきは『手袋をさがす』『時計なんか恐くない』の2編です。

私と年齢がそんなに変わらない頃の向田さんが感じた焦り、ジレンマ。自分にもよくあてはまります。時間を無駄にしてしまった、もっとやりたいことがあるのに…。

向田さんはそんな20代を振り返っています。それを読んだ私は今はそれでもいいかな、と思えるようになりました。

焦りはまだありますが、今出来ることを精一杯やっていくのみです。

今年1年はなかなか楽しい1年になりました。

3 件のコメント:

  1. 橋です。”To be,or not to be”の部分ですが、いろいろな訳があるようです。「生きるべきか死ぬべきか」以外にも「生か、死か、それが疑問だ」(福田恆存、1967年)というのもよく聞きますね。

    坪内逍遥の訳は、「世に在る、在らぬ、それが疑問じゃ」というものです。その他、「死ぬるが増しか、生くるが増しか、思案をするはここぞかし」(外山正一、1882年)というのもあります。最後のは、歌舞伎っぽくなりそうです。

    向田さんの本では、「字のないはがき」という中学校の国語の教科書に載っている短編が、若い人にはいちばん知られているのではないかと思います。その他の作品についても、父と娘の関係を描いたようなお話が多いので、一度じっくり(親の立場から)、読んでみたいものです。

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  2. ボンテさん。
    読んで無駄な本なんてありません。見て無駄な映画も、そんなにはありません。(どんな駄作といえども、それを見た時間や空気、記憶に意味があったりします。)

    無駄にするかどうかは、結局自分自身の問題なんですね。

    昔々、30年ほど前に、同じように何をしていいのか分からず、日々がむしゃらに本を読み、映画をみていたヤツがいました。
    そいつが、その後、何かを見つけることができたのかは聞いていません。

    でも、きっとそれが無駄だったとは言わないでしょう。

    だって、今でもそいつは、そこに探し物を見つけられるかのように本を手に取っていることがありますから。

    To be,or not to be.と言えば、メル・ブルックスがこの映画のリメイクを作っていました。邦題は「メル・ブルックスの大脱走」で、ちょっとかわいそうなくらい。この人の映画は「メル・ブルックスの~」というのがいくつかありますね。せっかくのいい作品が台無しのような気がしますが。
    役者としてのメル・ブルックスはアクが強くてあまり好きになれませんが、監督、プロデューサーとしては超一流ですね。もちろんコメディアン、役者としてもすごい人なのですが。そういえば「プロデューサーズ」という作品もありましたね。ジーン・ワイルダーが出ていた「ヤング・フランケンシュタイン」なんかも好きでした。

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  3. KOさん、橋さんコメントありがとうございます。
    また見たい映画が増えました(笑)
    確かにその映画を見た時間や空気というものは覚えているものですよね。誰とどこで、とか細かいところまで。
    大学生の頃図書館で昔の映画の上映会やっててさ、見てみたらそれが案外よかったんだよね、なんて思い出してもらえるようなとぼらシアターにしていきたいなあと思いました。

    『ハムレット』の訳はいろいろありますね。ついつい声に出して読んでしまいました。私は新潮文庫のを読んだので福田さんの訳でした。

    向田さんは、そうです、中学の時教科書で読んだのがきっかけで興味を持ちました。短編小説は途中で挫折したのですが、エッセイは好きです。読んでいると心が落ち着きます。

    それにしても今年一年は図書館&図書館の皆さんにだいぶお世話になりました。感謝です。
    よいお年を☆

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