これは私の今年の流行語大賞です。いうまでもなく、シェイクスピア『ハムレット』の名台詞。
『ハムレット』にいたく感動した!わけではなく、タイトルもずばり『生きるべきか死ぬべきか(To Be or Not to Be)』という映画の影響を受けました。
『生きるべきか死ぬべきか』は1942年アメリカの映画。大仰なタイトルからは想像できない、洗練された笑いを届けるコメディ映画です。時期が時期だけに徹底的なナチ批判をしますが、それを笑いの中に溶け込ませているところがすごい。
登場する夫婦は俳優で、『ハムレット』の舞台を演じています。
「To be ~」のところは独白ですから、舞台上に夫ひとり。その間に妻が若い男と逢引をするんですね。
逢引のタイミング、サインになるのがこの台詞の始まりです。この台詞の生かされ方が絶妙。すごく気に入って流行語となるにいたったわけです。
読んでいたから、知っていたから、そのものがより楽しめる、ということがあると思います。パロディ作品なんてそうですね。もとを知らないと楽しめない。『ハムレット』自体、読んでもおもしろいともおもしろくないとも思いませんでしたけど、読んでからこの映画を観てよかったと思いました。
私の今年1年はその[もと]をひたすら吸収していたような気がします。本を読む、映画を観る、古典からファンタジーからいろいろと、次から次へと。今すぐに何かに変わるわけではないことに、一見無駄とも思えることに時間を費やしました。
そんな日々を送った私にとって、印象に残った本。脚本家・小説家である向田邦子さんの『夜中の薔薇』です。
突然の飛行機事故で亡くなられた方なので、死後、いろんな雑誌からの文章(エッセイ)が1冊の本にまとめられていて、この本もその1冊です。旅行記だったり食べ物のことだったり、男性鑑賞法なるものもありますが、特筆すべきは『手袋をさがす』『時計なんか恐くない』の2編です。
私と年齢がそんなに変わらない頃の向田さんが感じた焦り、ジレンマ。自分にもよくあてはまります。時間を無駄にしてしまった、もっとやりたいことがあるのに…。
向田さんはそんな20代を振り返っています。それを読んだ私は今はそれでもいいかな、と思えるようになりました。
焦りはまだありますが、今出来ることを精一杯やっていくのみです。
今年1年はなかなか楽しい1年になりました。